知的財産知恵袋 Mail Magagine Archive
【2011年5月13日 第16号】
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◆◇◆ 佐野国際特許事務所 メールマガジン ◆◇◆
2011年5月13日 第16号
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発信元:佐野国際特許事務所
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ピックアップして、送らせて頂きます。
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◆◇ 日米特許審査ハイウエイについて ◇◆
<<はじめに>>
特許審査ハイウエイ(PPH:Patent Prosecution Highway)とは、早期審査制
度の一種であり、本国特許庁等での審査結果を活用して外国特許庁で審査を受
ける制度です。
日本の出願人の立場で言いますと、日本の審査で特許になった場合等に、そ
の審査結果を利用した審査を、外国で受けることができます。これにより、出
願人にとっては早期権利化等が期待でき、また、各国特許庁にとっては審査業
務の効率化が期待できます。
日本の出願人が特許審査ハイウエイを利用できる国は、現在、韓国、シンガ
ポール、米国、カナダ、欧州(欧州特許庁への出願)、英国、ドイツ、デン
マーク、フィンランド、オーストリア、ハンガリー、スペイン、ロシアとなっております。
今回は、需要が高いと思われる、米国での特許審査ハイウエイについて説明
します。
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<<特許審査ハイウエイの利点>>
あくまでも統計的なデータにすぎませんが、米国出願で特許審査ハイウエイ
を利用する場合、以下のような効果が期待されます(2008年の統計)。
(1)通常より早期に米国特許を取得することが期待されます。
特許審査ハイウエイの可否決定に1~3ヶ月、その決定後、1~9ヶ月程度
で許可決定が期待できます。
(2)通常の審査よりも特許になり易いと言われています。
米国で特許が許可される比率は、通常は45%であるのに対して、特許審査
ハイウエイを利用した場合は95%です。
(3)中間処理のコスト減が期待されます。
米国において、特許が許可されるまでのオフィス・アクション(拒絶理由通
知)の回数は、通常は平均2.8回であるのに対して、特許審査ハイウエイを
使用した場合は1.7回です。中間処理の回数が少なければ、早期権利化に加
えて、総コストが安くなることも期待できます。
<<特許審査ハイウエイの条件>>
日本人(日本企業)が米国で特許審査ハイウエイを利用するためには、以下
の条件を満たす必要があります。
(1)日本出願に基づくパリ条約優先権を主張して米国出願したこと、又は、
米国を指定してPCT出願(国際出願)したこと。
パリ条約優先権は、まず日本に特許出願し、その後で、日本と同じ発明を外
国出願したい場合等に利用する制度です。通常は、特許明細書等の書類を英文
で作成し、米国の特許事務所を介して米国特許庁に出願手続を行います。
PCT出願とは、複数国に同時に特許出願するための制度です。通常は、日
本特許庁に日本語書類を提出し、国際調査(日本特許庁による先行技術文献調
査)等を受けた後で、各国特許庁に所定手続を行います。
通常、米国出願するときは何れかの制度を利用しますので、この条件はあま
り気にする必要が無いかもしれません。
(2)米国で審査が開始される前に、特許審査ハイウエイの申請を行うこと。
米国特許庁が審査を開始した後は、特許審査ハイウエイの適用申請をしても
認められません。この場合は、通常の審査となります。
(3)日本の審査又は国際調査報告で「特許性有り」との見解を得たこと。
日本で「特許請求の範囲」を補正せずに特許査定を受けた場合は、日本と同
じ請求範囲で、米国の特許審査ハイウエイを利用することができます。「特許
請求の範囲」を補正して特許査定を受けた場合は、米国出願についても同じ補
正をする必要があります。また、特許査定になる前でも、全部又は一部の請求
項について「特許性有り」との見解が得られていれば、米国出願をそれらの請
求項に限定することで、特許審査ハイウエイを受けることができます。
なお、PCT出願の場合は、日本の審査結果だけでなく、国際調査等の見解
書に基づいて特許審査ハイウエイの申請を行うこともできます。すなわち、国
際調査報告等の見解書で「特許性有り」とされた場合や、一部の請求項につい
て「特許性有り」とされた場合(米国出願をその請求項に限定する必要があり
ます)も、米国での特許審査ハイウエイが受けられます。
<<特許審査ハイウエイの注意点>>
特許審査ハイウエイでは、以下のような事項に注意すべきと思います。
(1)権利範囲が必要以上に狭くなってしまうおそれがあります。
上記のように、特許審査ハイウエイを利用するためには、日本で特許性が有
るとされた特許請求範囲と米国での請求範囲とを同じにする必要があります。
しかし、通常の米国審査では、日本よりも広い権利範囲が認められることも多
いと思います。従って、日本で特許請求の範囲を狭めて特許されたような場合
には、米国で特許審査ハイウエイの適用を申請すべきがどうか、慎重に検討す
るべきであると思います。
(2)米国での審査開始前に、日本の審査で「特許性有り」との見解が得られ
ている必要があります。
上記の説明からお解りと思いますが、日本で「特許性有り」との見解が出る
前に、米国で審査が開始されてしまえば、特許審査ハイウエイを利用すること
はできません。
パリ条約優先権(上述)を利用する場合、日本出願の日から一年以内に米国
出願を行う必要があります。また、米国には審査請求制度が無いため、日本等
のように「審査請求しなければ、審査は開始されない。」というわけにはいき
ません。このため、場合によっては、日本よりも米国で先に審査が開始されて
しまうおそれもあります。
従って、米国で特許審査ハイウエイを利用したい場合は、少なくとも、日本
でも早期審査請求をしておく必要はあると思います。
なお、PCT出願の国際調査報告で「特許性有り」との見解が得られた場合
は、このような心配はありません(国際調査報告を受け取るまで、米国での手
続を一切行わなければ、米国での審査も開始されません)。
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<<終わりに>>
特許審査ハイウエイは、日本や国際調査で「特許性有り」という判断が出た
ことを前提にしているため、最初から「利用しよう」と決めてしまうことはで
きません。しかし、利用できる場合には、上記のような長所も期待できますの
で、国際調査で良い結果が出た場合等には、検討されてみてはいかがでしょうか?
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◆◇ 編集後記 ◇◆
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年度が変わり1月以上経過いたしましたが、皆様は健康診断へいらっしゃい
ましたか?
私はほんの数日前に健康診断へ行きましたが、ものの見事に警告を受けてき
ました。
半年以上、不健康な生活をしてきた結果なのでしかたがありません(涙)。
来年に向けて、せめて継続的に運動をしたいと思っていますが・・・頑張り
ます。
私に引き換え、当所の弁理士である石井はマラソンを趣味として継続的に走
っているそうです。
今年2月に行われた東京マラソンにも出場し、見事完走を果たしました。
(タレントの小島よしおさんと暫く併走していたそうです。)
病気もせず精力的に仕事をこなす姿からは、マラソンという趣味が実益を兼
ね備えた素晴らしいものに思えてなりません。
やはり、仕事にせよ運動にせよ、「継続は力」なのだと痛感する一月であり
ました。
それでは
皆様、引き続き今後ともよろしくお願い致します。
ご意見やご要望があれば遠慮なく、下記の「連絡先」までご連絡下さい。
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